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先日、千葉県酒々井町で「甲子」を醸す飯沼本家を訪問させていただきました。
~甲子のきれいな味わいは、どこから生まれるのか。飯沼本家を訪ねて~

飯沼本家の創業は、1688年から1703年頃。敷地内には明治蔵、昭和蔵、平成蔵が並び、長い歴史を感じさせます。 一方で、蔵に隣接するレストラン「きのえね omoya」やキャンプ場なども整備され、現在ではお酒を造る場所にとどまらず、地域を訪れるきっかけとなる場所としても親しまれています。

「きのえね omoya」ではきのえねのお酒と共に二十四節気料理を味わう至福のひと時が体験できます(^^♪
今回の訪問で特に印象的だったのは、甲子の酒造りを支える新しい設備です。 飯沼本家が掲げるのは、「機械と技の融合」。 酒造りの多くを機械化しながら、すべてを機械任せにするのではなく、蔵人の経験や判断を組み合わせることで、安定した品質と甲子らしい味わいを生み出していました。
①酒造りは、米を磨くところから始まる
まずは、蔵内に設置された精米機です。 見学時のお話では、千葉県内の酒蔵の中でも、自社で精米を行っている蔵はごくわずかとのことでした。 飯沼本家では、一般的な精米だけでなく、米を球状ではなく平たく磨く「扁平精米」も行っています。 扁平精米では、米の表面に多く含まれるタンパク質を効率よく取り除くことができます。50%まで精米する場合には、約50時間を要するそうです。 時間をかけて丁寧に米を磨くことで、雑味を抑え、甲子の持つきれいな酒質へとつなげています。 完成した酒の透明感は、仕込みが始まる前の精米段階からつくられているのです。
②ブレの少ない酒を育てる、自動製麹機
酒造りにおいて、味わいや香りを左右する重要な工程が麹造りです。 飯沼本家では、「KOS」と呼ばれる多段式自動製麹機を導入しています。 温度や湿度などを細かく管理しながら麹を育てることで、製造時期や担当者による差を抑え、安定した麹造りを行うことができます。 機械によって酒質のブレを少なくする一方、麹の状態を見極めるのは蔵人の仕事です。 数値による正確な管理と、人の感覚による判断。その両方を組み合わせることが、「機械と技の融合」という言葉に表れていました。
③もろみをやさしく動かす仕込みタンク
仕込みタンクにも、甲子の味わいをつくる工夫があります。 もろみを混ぜる櫂入れはコンピューターで管理され、自動で攪拌が行われています。 さらに、タンクの底が丸みを帯びた形状になっているため、タンク内では自然な対流が起こります。 人の力で強く混ぜるのではなく、もろみを穏やかに動かしながら発酵を促す設計です。 蔵では、この仕込み方法が甲子の持つ瑞々しさや、口に含んだときのガス感にもつながっていると説明されていました。 甲子を飲んだときに感じる軽快な口当たりは、こうした発酵中の細かな管理によって生まれています。

④重力を利用して、酒に負担をかけずに搾る
発酵を終えたもろみは、自動圧搾機で酒と酒粕に分けられます。 飯沼本家の圧搾機は建物の2階に設置されており、高低差と重力を利用してもろみを移動させています。 必要以上にポンプなどの力を加えず、酒に負担をかけない状態で搾るための工夫です。 酒を造る工程では、何かを加えることだけでなく、必要以上の刺激を与えないことも重要です。 この丁寧な酒の扱いが、なめらかな口当たりや、雑味の少ない後口を支えています。

⑤火入れから貯蔵まで、鮮度を逃さない
搾られた酒は瓶詰めされ、パストライザーと呼ばれる設備で火入れされます。 瓶の上から約70度のお湯をシャワー状にかけ、6段階に分けて加熱と冷却を行います。 急激に温度を上げ下げするのではなく、段階的に処理することで、酒質への負担を抑えながら火入れする仕組みです。 また、飯沼本家では、搾りから瓶詰め、貯蔵までの時間をできる限り短くしています。 酒が良い状態にあるうちに瓶へ詰め、素早く温度管理された環境へ移す。こうした工程が、甲子の持つフレッシュな香りや瑞々しい味わいを守っています。

少人数でありながら、年間を通して安定した酒造りを行えることは、飯沼本家の大きな強みです。 普段何気なく感じていた「きれい」「飲みやすい」「フレッシュ」という印象にも、蔵で行われている仕事の裏付けがありました。 甲子を手に取る際には、ぜひ香りや飲み口だけでなく、その奥にある「機械と技の融合」にも思いを巡らせてみてください。 一杯の中に込められた細かな工夫を知ることで、これまでとは少し違った味わいが見えてくるはずです。
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